日本の鐘は梵鐘が代表的で、梵鐘は本来仏教法具としての釣鐘を意味しています。
この無間の鐘は、高山常楽院にあり、鎌倉中期の作といわれています。鐘は、鐘楼につるされているのではなく、本堂内陣左側の社殿内に、御鐘大権現として秘蔵されて、ふだんは見ることができません。まして手を触れることは厳禁されています。
伝説によると、昔「役の行者」が1つの梵鐘を秘蔵していましたが、衆生済度のため同型の鐘を鋳て全国の霊場に配布しました。その中の一つが市内北川前坂の不動堂につるされていました。ところがこの鐘をつくたびに暴風や洪水がおこることがしばしばあったので、村人がこれを恐れて常楽院に鐘楼をつくってこの鐘をつるしたのだといわれています。
ところが文政13年高山の大火のおり火事のしらせにこの鐘をつくと、火勢がますます勢いを加え、全山を焼きつくしてしまいました。これはお鐘楼のたたりと一同がおそれおののき、社殿をつくり本堂内陣の奥深く御鐘大権現としてまつることになったのだといわれています。無間の鐘とよばれるのは、この鐘をつくと来世は無間地獄に落ちるということからつけられた名前です。
昭和37年5月1日 市指定